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「心が疲れやすいのは、いつ? なぜ?」
女性ホルモン ヘルス&ビューティコラム vol.2

連載 「女性ホルモン ヘルス&ビューティコラム
―女性ホルモンの波に着目してヘルス&ビューティを支える体・心・肌ケアを提案します」 vol.2

Text by 増田美加 / 女性医療ジャーナリスト

女性には、心が疲れやすい時期があります!

膝を抱えてふさぎ込む女性

コロナ禍での生活で、わけもなく落ち込むイライラする眠れない…など、気持ちがうまくコントロールできないこと、ありませんか。

長い間の強いストレスや過度の疲れがあると、ホルモンバランスは崩れます。心も女性ホルモンの影響を受けるのです。ひと月の中で元気なときと、落ち込んでしまうときがあるのを私たち女性は、みんな経験していますよね。

生理周期のなかで、メンタルが落ち込みやすい時期と、起こりにくい時期があります。下記の4つの時期で、どの時期だと思いますか?

  • ・ 生理中 (生理開始日~7日目) ⇒「生理期」
  • ・ 生理後~排卵日 (生理開始8日目~14日目) ⇒「ハッピー期」
  • ・ 排卵後~1週間 (生理開始15日目~21日目) ⇒「ニュートラル期」
  • ・ 生理前1週間 (生理開始22日目~28日目) ⇒「PMS期」

(*日にちはおよその目安で個人差があります)

エストロゲンの低下でセロトニン、ギャバも低下

特に、メンタルが不安定なのは、生理前のPMS期です。このメンタルの揺らぎは、偶然起こるわけではなく、理由があります。生理前1週間は、女性ホルモンのエストロゲンよりも、プロゲステロンの分泌が多くなる時期です。

月経周期・基礎体温・女性ホルモンのグラフ

女性ホルモンのエストロゲンが減少することで、脳内の神経伝達物質、セロトニンやギャバ(GABA=γ-アミノ酪酸)が不足します。

セロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンなどとともに、精神状態に大きく関係します。脳内のセロトニンが減少すると、抑うつ、不安、緊張、イライラなどが高まりやすくなったり、痛みを感じやすくなったりします。
また、ギャバは、脳の活動を抑えて、穏やかにする働きがあります。働きが悪くなると不安、緊張、イライラ、気分の高まりなどが現れます。

女性ホルモンのエストロゲンと、セロトニン、ギャバは、同調して動くため、エストロゲンが減少すると、神経の機能が低下して、セロトニンやギャバも減少するのです。

特に、セロトニンの合成能力には、男女差があって、女性は、男性より合成能力が低いという特徴があります。脳内でセロトニンが不足すると、心の安定が崩れ、イライラ、不安、悲しみ、無気力、怒り、恐怖、緊張など、さまざまなネガティブな感情が暴走しやすくなり、うつとも関係します。
また、顔の表情が暗くなったり、姿勢が悪くなるなどの影響も現れると言われています。

うつは、男性よりも、女性のほうが2倍も多いことから、女性が脳内でセロトニン不足を起こしやすいことがわかります。

セロトニンを増やす食べ物は?

豆腐

セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから作られる神経伝達物質ですが、食べ物自体にセロトニンが含まれているのではなく、トリプトファンを摂取することによって体の中で生成される物質です。
そのため、セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンを含む食べ物を摂取することで、生成を促すことができます。

セロトニンを増やすトリプトファンが多く含まれる食品は、日本の健康食の代表ともいえる、豆腐や納豆やみそなどの大豆製品です。大豆製品には、セロトニンが生成されるときに関係するマグネシウムも豊富に含まれています。ちなみに、納豆40gにトリプトファンは96mg含まれます。

ギャバを摂り入れるには?

白米と発芽玄米

また、ギャバは、私たちの体内に広く存在している、天然のアミノ酸のひとつです。
代表的な働きは、リラックス効果。脳はストレスや興奮状態で神経が高ぶり、アドレナリンが活発に分泌されますが、ギャバはアドレナリンの分泌を抑制します。
ギャバを摂ることで興奮状態を抑え、体が休まりやすいリラックス状態へと導いてくれる成分です。

ギャバは、動物や植物の内にある天然のアミノ酸なので、日ごろ、口にするさまざまな食品に含まれています。
代表的なものは、発芽玄米。100g中に10mgのギャバが含まれています。白米に含まれるギャバの約10倍の量です。このほかにも、トマト、なす、じゃがいも、かぼちゃ、かぶ、キャベツ、みかん、ぶどうなどの野菜や果物、漬物、キムチなどに、ギャバが多く含まれています。

メンタルの落ち込みを解消するには?

夕日を眺める女性

コロナ禍で不安定な中、心が落ち込みやすいPMSの時期は、自分を甘やかして、リラックスできる方法をみつけましょう。できるだけ早起きして朝の光を浴び、体内時計を整えて、生活リズムを一定にすることも大事。楽しめる適度な運動も、心にとって大切です。
セルフケアでは改善せず、もしも、つらい時期が長引くようなら、躊躇せず精神科、心療内科、婦人科で相談しましょう。

(2020年10月13日掲載)

増田美加 女性医療ジャーナリスト

増田 美加

女性医療ジャーナリスト
エビデンスに基づいた健康医療情報について執筆、講演を行う。女性誌『婦人画報』『GINGER』『My Age』、新聞『時事通信』、女性WEBマガジン『MY LOHAS』『Web GINGER』ほかで女性のヘルスケアや医療の連載を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。