WRAY

LIFEインタビュー/金子麻貴さん
「無理をしない、欲張らない。細く長く、自分の手に収まることを続けていく」

さまざまなジャンルで活躍する女性に、心身の悩みとの向き合い方やヘルシーに過ごすための秘訣を聞くWRAY・LIFEインタビュー。
今回は、ママとベビーのためのグッズブランド「tesoro baby(テソロベビー)」、大人のカジュアルを提案する「regleam(リグリーム)」のディレクターとして活躍する金子麻貴さんにお話を伺いました。
「悩んでいるくらいなら、動かなきゃ」と自分を鼓舞。出産を機に、何を大切に生きたいのかを考えた末に選んだのは、会社には戻らず自身のブランドを立ち上げるという新たな道。ターニングポイントでの心の変遷を語ってくれました。

まずは、できることから始めればいい
今は誰にでもチャンスがある

産後、元の職場へは戻らずに起業すると決意。
「ママのマインドに寄り添うベビーグッズがほしい」

―金子さんがディレクターをつとめる「tesoro baby(以下、テソロベビー)」と「regleam(以下、リグリーム)」。テソロベビーは息子さんの出産後にスタートされたので、もう5年が経つのですね。

準備期間も入れるとテソロベビーは5年、リグリームは2年が経ちました。おかげさまでいろんな方に知っていただけて嬉しいです。

―今でこそインスタグラムを起点にブランドを立ち上げる方が多い中で、金子さんはその先駆けだと思います。ご自身のブランドを始めるきっかけは何だったのでしょうか。

5年前に息子を出産したとき、世の中にあるベビーグッズと自分のマインドにかなりズレがあったんです。ポーチも授乳ケープももっとシンプルでいいのに、派手な色は子どものおもちゃだけでいいのに!って(笑)。

私のような思いを抱えているママがたくさんいることがわかり、シンプルなベビーグッズを提案するテソロベビーを立ち上げました。

でも実は、出産後に元の職場へ戻るべきか迷っていたこともきっかけでした。

テソロベビーのポーチ

シンプルなデザインとくすみカラーで大人っぽさをプラスしたテソロベビーのアイテム

―どんな迷いがあったのですか?

出産まで7年間働いた職場は仕事も慣れていたし楽しいし、そのまま復職すればスムーズだったとは思います。でも育児との両立はもちろん、自分の気持ちが持つかどうかという不安がありました。

急に自分が体調を崩して休まなきゃいけない、子どもが熱を出してお迎えに行かなきゃいけないという日は、きっといずれ来ますよね。

特に私は 自分を追い込んでしまう性格もあり、職場に迷惑をかけてしまうことなど、実務以外の大きなプレッシャーを背負いきれないと思ったんです。

―元の場所に復職はせずに、テソロベビーの立ち上げへ向かっていくのですね。

はい。子育てをしながら自分のペースで働けること、作りたいものができたこと、仕事にも変化がほしいという気持ち、いろんなことが重なりました。

これまでにアパレルブランドとコラボさせていただく機会もあり、物を作る工程や裏側を勉強させてもらったので、それを生かせるかも、まずはやってみよう! と。

自分で事業を立ち上げた友人や先輩ママが周りにいたので、彼女たちが背中を押してくれたのも大きかったです。

テソロベビーのポーチ

リグリームでは金子さんが自らモデルをつとめる

寂しさから、保育園へ預けることができなかった

―起業に向けて、金子さんは具体的にどんなことから準備を始めましたか?

まずは自分で調べて、わからないことは詳しい友人にも話を聞きました。会社のつくり方、WEBショップの立ち上げ方、ブランド名の商標登録、一緒に伴走してくれる会社を探すこと…。大体のことは、調べたら何でもわかります。自分でできることとプロにお任せしたほうがいいことを、潔く分けて進めていきました。

デザインに関しては、本格的なデザイン画はかけないものの絵は得意だったので、イメージを書き起こしてみたり、写真を集めたりして可視化しました。いずれ伴走してくれるパートナーが見つかったときに、頭の中をいかに明確に伝えられるかがものづくりのカギになりますよね。子育てをしながらなので、時間も根気も要るデザインは最初に描き溜めておいて、スムーズに進められるように。

―やると決めてからの行動力がすごいです!

悩んでいたら時間だけが流れていってしまうので、とにかく動かなきゃと必死だったのだと思います。今しかない!と無我夢中で。

―初めての育児との両立は大変でしたよね。

今思い返すと、この準備期間が一番辛かったかもしれません。ブランドが実際に形になっていないため保育園に入るのが難しく、準備段階では一時保育へ預けていたんです。けれど一時保育でさえ電話を100回かけてようやく1回繋がるような状況で、ベビーカーで息子を連れて打ち合わせへ行くことも。

保育園に空きが出て預けることができたのが3歳の春。息子も最初は嫌がっていましたし、私も心苦しかったです。息子がかわいすぎて誰かに子どもを預けられないという私の気持ちもあったんです、正直なところ。

―WRAYのユーザーの方からも、「子どもから嫌だと言われたときの気持ちのハードルをどう乗り越えているか」「預けるときに辛くなかったか」という質問をよくいただきます。

私も本当に辛かったです。でも仕事をしながら子育てをしていく上では、越えるべきハードルなんですよね。

3年間一緒にいる中で、母親以外と触れ合うことが大事なんだと気づく瞬間があって。私の予定で息子を振り回して疲れてしまうより、保育園で決まった時間に昼ごはんを食べて、お昼寝して、おやつを食べて、遊ぶということが子どもの成長のために必要だと納得できたときに一切辛さがなくなりました。

自分の作ったものに共感してもらえることが一番嬉しい

―初めての業界、とくにアパレル業界は新参者に厳しそうなイメージがあるのですが、実際いかがでしたか? 事業を進める中で大変だったことはありましたか?

みなさん、快くいろんなことを教えてくださいますよ。ただ、テソロベビーの商品を作る中で一度すごく悔しい思いをしたことがありました。

一緒に組んでみたいオーガニックコットンを扱う会社にアポイントを取り会いに行ったんです。百貨店でのポップアップに向けての大切な商品で、納期や内容を快諾してくださりホッとしていたのですが、いざ蓋を開けてみると、お願いしていたことがどんどん先延ばしにされてしまって。そのときのたらい回し感がとてももどかしかったんです。

素人が始めたブランドだから? 女性一人だから? 知名度がないから? と、悶々として夜も眠れないほど悔しかったのですが、私にもきっと足りない部分があっただろうし、いつか認めてもらえるように学び続けなきゃと誓いました。

―でもユーザーに近い立場にいるからこそ、テソロベビーもリグリームもたくさんの方が手に取っているのだと思います。今欲しいものがあるというか。

ありがとうございます、嬉しいです。

シーズンごとに新作を発表するのではなくて、今カットソーが欲しい、ずっと着られるコートを作ろう、など思いついたタイミングで形にしているんです。世の中のアパレル業界の動きとは違う素人っぽい動き方をしているのかもしれませんが、その分、今欲しいものがあると思っていただけているのかなと思います。

従来の業界のルールからは少し逸れてしまうけれど、まずは自分一人でできる、納得できる方法がこれでした。

―ブランドを育てるために、意識していることは何でしょうか?

ひとつは、同じ温度感で仕事をしてくださるパートナーと一緒に仕事をすることです。製品上のトラブルは今でもごくたまに起きてしまうのですが、そんなときに迅速に対応してくれるか、貴重な時間を注いでくれるか、次に同じことが起きないように対応策を一緒に考えてくれるか。シンプルですがこれに尽きると思っています。

もうひとつは、手に取ったら写真以上だった! と思ってもらえるものを作ることです。自分のインスタグラムの写真を見て購入を決めてくださる方がほとんどなので、期待を裏切らないように。

とくにテソロベビーは赤ちゃんが触れるデリケートなアイテムも多いので慎重に作っていますね。人生の節目に使ってもらえる、子どもの成長に寄り添えるものも多い。

母子手帳ケースの写真にタグ付けをしてインスタグラムで出産報告をしてくださっている写真を見ると、毎回感激しちゃって。自分の作ったものに共感してくれ、誰かの人生の一部になれることは一番の喜びですね。

テソロベビーのポーチ

ママ目線で、機能性や使い勝手にもこだわったテソロベビーのポーチ

お母さんは、生理だから怒っているわけじゃないんだよ

―金子さんはこれまでに、PMS(月経前症候群)など女性特有の心身の悩みを抱えたことはありますか?

生理前は異常な眠気とイライラに襲われます。WRAYのLINEアカウントの月経周期トラッキングで記録をしてみたら、私の月経周期はまさかの24日。

短いスパンで生理がやってくるということは、月の約半分は眠いしくイライラしてしまうし、万全ではない体調の日が続いているということですよね。私、損してる!って愕然としました。

パスワードを間違えてしまうくらい頭が動かないこともあって、やらなきゃいけないことが2、3日ずつ伸びていくような日々です…。

―そのために、何か対策はしていますか?

気持ちの面でひとつだけ。ある友人は自分が生理中、体調が万全じゃないことを子どもに話しているそうなんです。

「お母さん生理だから、怒っているわけじゃないんだよ」って。ちょっと気持ちがピリッとしたり家事のやる気が出なくても、〝お母さんは体調がよくない〟ことを家族が知っていればスムーズにいく、というのを聞いてなるほど! と。

それからは、家族に都度言うようになりました。夫と前よりもっと協力できるようになり、少し気が楽になりましたね。

―金子さん的、普段のリフレッシュ方法があれば教えてください。

寝る前の息子とのイチャイチャタイムとお風呂です。お風呂にはテレビもない、スマホも持ち込まない、唯一裸の状態で子どもと向き合えますし、意識的に一切スマホに触れないのは自分にとって心休まる時間です。

あとは、鍼(はり)ですね。顔、首、背中と電気を流してもらうと体が本当に軽くなるんです。七五三のとき、あまりに体が硬くなっていて置き鍼をしていたんですけど、それを忘れたまま着付けをして写真撮影もそのまま、帰り道に気づいたのはちょっとガッカリでしたけど(笑)。

まずは小さくでも始めてみようという、一歩踏み出す勇気

―今後の目標はありますか?

今は2つのブランドを続けていくことです。お客様に長く愛されるブランドに育てていきたいですね。

ビジネスを大きくしませんか?というお誘いをいただくこともあるのですが、「どうする気もありません。ただ細く長く自分の手の中に収まるくらいでやっていきたいです」と、ぴしゃっと断ったこともありました(笑)。

目が行き届かない範囲まで広がると、ブランドがどんどん自分の手から離れていってしまいそうだし、思っていない方向に流れていってしまう可能性だってあります。自分たちで小さく細々とやっていければいいかなと思っています。

―WRAYのユーザーの中にも、「自分で何か始めたい」という方がたくさんいます。今は会社員でも副業しやすい環境ですし、それこそ育休中に見つめ直すことも。そんな皆さんへメッセージをいただけますか?

今だから言えるのですが、私はうまくいかなかったらすぐにやめようと思っていました。

だからなるべくリスクを背負わずに、いつでも引き返せるくらいの規模で、最初はポーチひとつから始めてみたんです。今は少しずつお客様に知っていただけていますが、最初のスタートはそんな感じでした。

今の時代、わからないことは調べれば何かしらの答えに辿りつけるんじゃないかなと思います。例えば、起業の仕方や必要なことが。そういう意味では誰にでもチャンスがありますよね。できることを、まずは小さく始めてみる。その一歩をぐいっと踏み出す勇気さえあればいいのだと思います。

お仕事中の金子麻貴さん

Text/Sonoko Fujii

金子麻貴さん プロフィール画像

金子 麻貴
ブランドディレクター

1985年愛知県生まれ。2019年に、ベビーとママのためのグッズブランド「tesoro baby(テソロベビー)」 @tesoro___babyとデニムに合うベーシックをテーマにアイテムを展開するブランド「regleam(リグリーム)」 @re_gleamを立ち上げ、企画・デザイン・ディレクションを行う。また人気ブランドとコラボレーションをしたアイテムは即完売するなど、アパレル分野で幅広く活躍。インスタグラムのフォロワーは約33万人。さまざまな世代の女性から支持を集めている。一児の母。
Instagram:@mtmmaki 
Blog:https://ameblo.jp/maki--kaneko/