WRAY

WORKインタビュー /大橋菜央さん
「ライフステージごとに優先順位を考え、働き方を変えてきた」

さまざまなジャンルで活躍する女性に、ライフステージの変化が及ぼす仕事への影響やコントロール、心身の悩みとの向き合い方について聞くWRAY・WORKインタビューvol.1。お話を伺ったのは、元旅行雑誌編集長の大橋菜央さんです。社会人になってから約14年。その間に結婚、第一子出産、復職を経て、ほぼ歩を緩めることなく仕事に取り組んできた大橋さんは今年、第二子の出産を機に、初めて仕事と距離をおくことを選び、現在育休中。ライフステージが変わるごとに“大切にしたいこと”を明確にして、働き方を変えてきたという大橋さんのこれまでとこれからについて伺います。

そのときどきのゴールを決めて
働き方を柔軟に変えていく

仕事から一旦離れることに迷いはなかった

―ご出産おめでとうございます!

ありがとうございます。2か月が経ちますが、2歳の長女は今、イヤイヤ期真っ只中、絶賛赤ちゃん返り中です(笑)。3歳になると少し楽になると聞いているので、なんとか踏ん張っています。

―今は育児休業を取られているんですよね。

はい、現在は産休中ですが今回は育休も取得してゆっくり育児と向き合う予定です。第一子のときは、自分が仕掛けている仕事が途中で、担当媒体が過渡期だったこともあり、また両親に子供を預けられる目処がたったので娘が3か月の時に復帰しました。ありがたいことに、当時の上司が、私がすぐに戻ってこられるのであればと、ポジションを兼任しておいてくださって。今回は、新型コロナウイルスの収束がまだ見えない中、長女のプリスクールの運営が安定せず、長女が在宅の環境下では仕事と育児の両立が見えないため、目処が立つまではお休みさせてもらおうと思っています。それに、第一子のときと同じことを繰り返すのではなく、違うことをしてもいいかなとも思っているんです。第一子のときに“早く復帰する”ということは経験したので、今度は1歳までずっとそばにいたらどんなことがあるのだろうと、純粋に興味がありますね。そんなことを期待してじっくり向き合ってみたら、二人育児は想像以上に大変!これはすぐには戻れないかもしれない……、と思ったのも正直なところです。

―お仕事を一旦手放すことに迷いはありませんでしたか?

仕事は自分ができる限り全力で、いつどのタイミングで終わったとしても悔いがないようにやってきましたし、コロナ禍の最中、最後は全速力で走り切って信頼できる方にお渡しできたので、迷いや葛藤はありませんでした。携わる媒体にもちろん愛着はありますが、それを私物化してはいけないとも思っているんですね。だから誰かが引き継いでくれることはとてもありがたかったです。

―社会人になってから今まで、これほど長期のお休みは初めてのことじゃないでしょうか。お仕事と距離をおいてみていかがですか?

仕事がどんどん離れていてくことが面白くもあり、なんだか不思議な感覚ですね。でも今は目の前のことに精一杯で、仕事から離れた寂しさを感じる余裕もないかもしれません。赤ちゃんはフニャフニャ、お姉ちゃんもフニャフニャなので(笑)。
第一子のときは3か月で戻ると決めていたから、産休中も仕事の情報をキャッチアップし続けようという意識が強かったですし、当時のメンバーの皆も大事な話を共有しておこうとしてくれたんですね。それがありがたくもあり、頭の中では仕事が継続していたのが前回の産休でした。今回は一旦離れると決めたので、逆にスッキリしています。

大橋菜央さんとご家族

photo by CHIHIRO

子どもの成長も見逃したくないし、仕事も頑張りたい。ライフスタイルに働き方を合わせてきた

―2006年に入社されてから、休まずに駆け抜けてこられたと思います。その間、辛かったことはありましたか?

20代前半は辛かったですね。自分自身を理解しきれていないので、どういう仕事なら・どういう働き方なら、自分のモチベーションを高く保てるかということがわからないまま、とにかく一生懸命働いていました。最初に就いたのは営業職、その後企画職に移動しましたが、どの仕事でも自分のキャパシティも知らずにアクセルを踏み続けるタイプだったので、いくつかの案件を抱えていても、楽しくて全部のアクセルを踏み続け、結局終わりが見えず涙が出てくる、というオチ(笑)。自分をコントロールできていないことがとても苦しかったです。その苦しさから脱出するには、ごく当たり前のことですが、まずは自分がどういう状況下であれば元気に働けるのかを理解すること。私の場合はきちんと睡眠をとることが大切でしたし、周りの勢いに流されずに自分のペースで仕事をする術を見つけることが必要でした。本当に体力不足だったこともあって。

―どのようにご自身のペースを整えていきましたか?

逆算で考えることが大切だと思っています。どうやったら睡眠時間を十分とれるんだろう、皆と同じように毎日沢山の訪問をこなしていると自分の体力が追いつかない中、少ない訪問数でも同じように予算を達成するにはどうすればいいんだろう、って。何が無駄かを考えました。例えば、クライアントへの提案資料を作っている時間って結構長い割に、頑張って作ってもニーズとずれているとお蔵入り。だったら最初は口頭でお話すればいいのではと思い、企画書を持たずに訪問してみたたら、その方が深くヒアリングができたんです。おかげでヒアリングした内容を簡単にまとめた企画書1枚と見積書だけで大丈夫だと気づきました。一例ですがこんな風に少しずつ自分の体力に合わせて改善していき、20代後半にはだんだんと自分のペースを掴めるようになりましたね。そして、31歳の結婚のタイミングで、働き方をさらに変えたんです。

―なるほど。どんな風に変えたのですか?

夫が早く帰宅する人だったので、家で一緒に夜ご飯を食べたいなと思って、18時には会社を出ることを結婚前から始めてみました。そのゴールを決めたら、18時までに終わるように仕事をやりくりするようになって。第一子が生まれたときには3か月で復帰してしまった分、日々子どもとの時間ももちたいと思ったので、16時半には帰るようにしました。そうすると帰宅してから一緒にお散歩へ行けたりもして。子どもの成長を見逃したくないし、仕事もしたい、両方やるぞという欲張りな方法をとっていたのが第一子のときですね。

娘さんと手を繋いで歩く大橋菜央さん

実はマネジメント職の方がコントロールしやすい。選択肢は減らさないで。

―第一子をご出産されたときは、すでに編集長という立場に就いていらっしゃいました。マネージメント職と子育ての両立はかなり大変だったのでは…と想像します。

そうですね。もちろん楽ではなかったのですが、実はマネージメント職の方がプレイヤーとして働くよりも時間のコントロールが効きやすいと感じています。働く時間の長さが結果に繋がる仕事の場合は、どうしても時間の確保が必要となりますが、マネージメント職はそういう基準での評価ではありません。それよりも、ブレないジャッジや間違えないジャッジをすることが大事。イレギュラーや緊急の対応が入る立場なので、家に帰ってからも常に電話も出るしメールもみるなど、いつでも対応できるようにしていました。働く時間は短くても、やるべきことはその瞬間に対応する、という仕事の仕方に変えていったんです。子育てとの両立ができないだろうというイメージから、マネージメント職をキャリアの選択肢から省いてしまう女性も多いと聞きますが、実は両立がしやすい職種だと実感しています。

インタビューに答える大橋菜央さん

低容量ピルに助けられた20代

―大橋さんはこれまでに、PMS(月経前症候群)など女性特有の悩みを抱えられたことはありますか?

20代前半の頃、PMSが辛かった時期がありました。仕事が手につかないほどではないものの、イライラと肌荒れがひどい時期があって。一見小さなことですが、日々のモチベーションにはかなり影響しましたね。ホルモンバランスの崩れが肌荒れに繋がることもあるけれど、PMS由来のものは表面的なことでは改善しないことを知っていたから、すごく辛くて。
今思い返すと、睡眠をとることや健康的なライフスタイルは二の次になってしまっていました。私なりに気にしているつもりでしたが、仕事が楽しくて優先しすぎてしまったんです。眠れないのは仕方がないとか、昼ごはんは適当でも、まいっか!くらいに思っていて。

―PMSがある中でのハードワークは、きっときつかったですよね。どのようにPMSと向き合っていましたか?

最終的に、1番和らげてくれたのは低容量のピルでした。20代半ばから結婚をする31歳頃まで長い間お世話になっていて。夫に出会ってから、プライベートも大事にする考え方に気づかされました。睡眠をしっかりとるようになり、運動もするようになり、野菜中心のバランスの良い食生活に変わってきたときに、ふとピルをやめられるような気がして。それで思い切ってやめてみたところ、PMSの戻りがなかったんです。
今思えばピルだけに頼らなくても生活習慣次第でもうちょっと変えられたのかもしれないのですが、その時は仕事に一生懸命で、仕事のために少しの犠牲は仕方がないと思っていた自分がいた気がするんです。でもそういう考え方じゃなくなった今なら、当時の自分に教えてあげたいなと思いますね。もうちょっとできることがあったよ、と。それでもピルには助けられました。

―生活習慣を見直すことが大橋さんにとっては大切だったのですね。

そうですね。今後もピルは飲まなくても大丈夫かなって。もしかすると妊娠出産での体の変化もあるのかもしれません。でも当時状態が悪かったときに、悪いという認識があまりなかったことが怖いなと思っているんです。
当時仕事は楽しく、徐々に責任のある仕事を担うようになっていたのですが、本来は仕事も心身の健康も両方維持する方法を考えるべきだったんですよね。睡眠時間をしっかりとって、昼ごはんをしっかり食べて、身体にとって最低限の土壌を整えた上で、じゃあその中で仕事にどう向き合うのかと、考えるべきだった。今は私が働いていた10年前に比べるとちょっと違いますよね。働き方も。
今考えれば、自分をもっと労えたと思います。

不調を伝えたほうが信頼関係が築けた

―ちなみに妊娠中は、つわりなどは伴わなかったですか?

実は4週目から妊娠後期までずっと吐き気が続き、すごく辛かったんです…。

―そうでしたか…。そのときの体調はどうやってメンバーにシェアしていましたか?

わたしは安定期かどうかに関わらず、直接的に関わるメンバーには妊娠がわかった瞬間に話していました。周りのメンバーは、わたしが体調が悪いのか機嫌が悪いのかもわからないじゃないですか。機嫌が悪いのではと無駄な心配をかけたくないし、自分も体と赤ちゃんを守るためには事実を知ってもらうことも大事だと思っていたんです。もし万が一悲しいお知らせをすることになったとしても、受け入れるしかないと覚悟を持っていたので、わかった瞬間に話しました。

―職場へは安定期に入ってからと、一般的には認識されていますが、つわりが始まる初期の頃が実はとても大変ですよね。だから女性は、職場へ言うタイミングに悩まれる方も多い。

そうですよね。でも話した方が周りとしても安心すると思うんです。第二子妊娠中、とあるトラブルを抱えていた時期とつわりが辛い時期がちょうど重なっていたんですね。ある日メンバーに、「今日体調悪かったのは実は妊娠しているからなんだ」と伝えたら、「あ、よかった。トラブルのせいで体調が悪くなってしまったのかと心配していたけど、それを聞いて安心しました」と一緒に喜んでくれて。事実を伝えることの方が、信頼関係を築けるのだと思いました。

大橋菜央さん

これからも、目の前のことにまっすぐ向き合っていく

―まだ先ですが、復帰をしてからの働き方について考えていますか?

このコロナ禍を経て、少なくとも世の中の働き方自体が変わりましたよね。自宅で働いてみて、プライベートとの距離がみんなきっと近くなった。仕事に行ってしまうと家庭内が見えないけれど、家で働くようになると蔑ろにしていたものをもう少し大切にできるようになりますよね。またリモートワークにより移動時間なく効率的に働けるようにもなっているので、これまでより育児と仕事を両立したい人にとっては、働きやすい環境になっていることには期待をしています。

―今後考えているキャリアプランについて教えてください。

実は私、1度もキャリアプランを立てたことがないんです(笑)。ずっと川下り型なんですよ。
仕事をしだすと目の前にやりたいことがどんどん出てくるじゃないですか。だから半年後や1年後に、この編集部をこうしたいとか、このコンテンツをこう活かしていきたいなどという野望は常にあるのですが、自分のキャリアプランとして山登り型で目標を立てたことが一切なくて。良きタイミングで良きご縁があった仕事に没頭してきました。今後も、キャリアに関しては川下り型で生きていきたいと思っています。

―最後に、プライベートでのプランはありますか?

まだそんなに深くは考えられていませんが、いずれ仕事に戻るために環境を整える準備はしておきたいです。出産は予定通り、思い通りにいかないこともありますけど、ライフスタイルはコントロールすることはできますものね。自分の理想の働き方を叶えるためにはどうしたらいいだろうって、また逆算をしながらこの長い育休中にゆっくり考えたいと思っています。

Text/Sonoko Fujii

大橋菜央さん プロフィール画像

大橋菜央

元旅行雑誌統括編集長。大学卒業後、2006年に人材サービス・販促メディアなどを手がける都内大手企業へ入社。営業・事業統括を経験したのち、2012年に旅行雑誌の編集長に就任し、統括編集長へ。プライベートでは、2016年に結婚。2018年に女の子を、今年5月には第2子となる女の子を出産した。現在は育休中。
Instagram:@naoliving